鉛蓄電池(※1)

部品名 おもな材料
陽極板 鉛・鉛合金(活物質は過酸化鉛)
陰極板 鉛・鉛合金(活物質は海綿状鉛)
隔離板 強化繊維、微孔ゴムまたは合成繊維
電槽 エボナイトまたは合成樹脂
電解液 希硫酸

基本的には陽極板、陰極板、電槽、セパレ-タ-および電解液としての硫酸から構成されている。鉛は陰陽極板の格子体材料、活物質の原料および鉛合金構成材料に用いられる。鉛蓄電池を構成する主要部品は右記の通り。

基礎化学反応は充電状態では陽極の活物質は過酸化鉛(PbO2)で、陰極の活物質は海綿状鉛(Pb)であって、放電すると次式に従って両極とも硫酸と作用して硫酸鉛(PbSO4)となる。

この蓄電池が電気を起す仕方は、陽極の極板に塗ってある過酸化鉛(PbO2)が電解液の硫酸(H2SO4)と反応して硫酸鉛(PbSO4)に変わろうとする。そのとき2個の電子を引き寄せようとする。一方陰極の鉛も硫酸と反応して硫酸鉛に変わろうとするが、そのとき2個の電子を生じ外へ追い出そうとする。このとき陽極と陰極を結ぶと電子が流れる。つまり電気が起って放電が行われる。こうして過酸化鉛(陽極)と鉛(陰極)がともにほぼ硫酸鉛になる頃、電解液の方も希硫酸が水(H2O)に近くなって電気は起きなくなる。蓄電池があがったというのはこの状態のことである。そこで充電をする。外部電源を使用して放電の場合と正反対に陽極から電子を取り出し陰極に電子を送ってやる。すると放電のときと全く逆の反応が起り放電する前の状態に戻る。すなわち陽極は硫酸鉛から過酸化鉛に、陰極も硫酸鉛から鉛に、電解液も水に近い状態からもとの濃度の希硫酸にそれぞれ戻り、外から与えられた電気エネルギ-が化学エネルギ-の形で蓄電池の中に貯えられる。この放電、充電を1サイクルという。
鉛蓄電池の用途として自動車用、据置用、船用、電気車用、可搬用がある。

化学製品(※1)

i)鉛白(塩基性炭酸鉛 2PbCO3・Pb(OH)2

鉛塩の冷水溶液に炭酸アンモニウムまたは炭酸ナトリウムを加えると得られる無色の結晶で顔料として用いられる。

ii)リサ-ジ

一酸化鉛(PbO)であり密陀僧ともよばれる。鉛を空気中で酸化すると得られる黄色粉末でPb 93%、 O2 7%よりなる。鉛ガラス、塩ビ安定剤、セラミックスなどに用いられる。

iii)鉛丹

四三酸化鉛(Pb3O4)で古くから鉛丹、光明丹と呼ばれている。粉末のPbOを450℃付近で長く熱して得られる赤色の粉末である。防錆塗料、鉛ガラス(管球用、光学用、クリスタル用他)セラミックに用いられる。

iv)黄鉛

クロム酸鉛(PbCrO4)を主成分とする黄色顔料で、リサ-ジを硝酸または酢酸に溶かし、これに重クロム酸ナトリウムの水溶液を加えて作る。色は淡黄色から赤色まである。塗料、印刷用インキ、合成樹脂着色等の用途がある。

v)四エチル鉛

テトラエチル鉛((C2H5)4Pb)のことで、優秀なアンチノック剤として内燃機関用ガソリンなどに微量混ぜて使われる。吸入や接触により中毒を起こすので、保護具を用いて取扱い、また保管場所に注意する。

鉛板(※1)

鉛板は硫酸に対する耐食性が強いので化学工業を始めとする工業用のほか、屋根材として建築用に、さらにX線、γ線防護用、さらに遮音、防振に用いられる。鉛テ-プ、鉛箔、鉛毛の素材ともなる。(※1)製造方法により、圧延材(JIS H 4301:1993)と DM材(JIS H 4303:1993)がある。

鉛管

鉛管は給水装置管類として最も古くから使用されている。飲料水への鉛溶出の問題から、従来主力であった水道用鉛管の使用は激減し、この対策として、平成2年1月に、内面をポリエスチレンでライニングした鉛管がJISで規格化された。(※1)その後、鉛の肉厚を薄くして内・外面のポリエチレン皮膜を厚くした「水道用ポリエチレン複合鉛管」(JIS H 4312: 2000)を開発した。(※2)
また、建物内および敷地内の各種衛生器具、厨房設備等からの排水を公共下水管または下水処理施設へ導入する排水用鉛管としても使用されているほか、化学工業用、ガス用としても重要である。(JIS H 4311: 1993)(※1)

はんだ(※1)

はんだはろう付け用すず-鉛合金の総称であって、組成はすず2~95%の広範囲の合金をさす。(JIS Z 3282: 1999)はんだ用のフラックスとしては塩化亜鉛が最も一般的であるが塩化アンモニウム、獣脂、松やになども使用される。電子機器の配線や構造物のはんだ付け等金属接合に用いられる。はんだの付きやすい金属と付きにくい金属がある。

ケ-ブル鉛被(※1)

ケ-ブル鉛被は電力や通信ケ-ブルを外側から被覆して湿気のはいるのを防ぎ、内部の絶縁性能を低下させないために用いるもので、純鉛では柔軟すぎるので、通常Sb0.7または0.85%の合金、As0.15%-Sn0.10%-Bi0.10%の合金、Sn0.4%-Sb0.2%の合金などが用いられる。

低融点合金(※1)

低融点合金は、すずより融点の低い金属及び合金の総称で、一般にビスマス、鉛、すず、カドミウム、インジウムなどの低融点金属の二元または、それ以上の多元合金のことである。用途は火災警報、高圧、高温装置の安全弁用プラグ、自動スイッチ、自動調節部分、薄肉管の曲げ加工用フィラ-メタル、精密鋳型、電鋳用中子など少量ではあるが変化に富んでいる。

硬鉛(※1)

鉛の機械的強さを高めるためアンチモンを1~12%を添加した鉛合金である。用途として、蓄電池、硬鉛板、硬鉛管、電線鉛被、硬鉛鋳物として使用される。硬鉛鋳物(JIS H 5601: 1990)はポンプ、バルブ、コック、継手、蓄電池の格子などに用いられる。また、硬鉛板は機器のライニング用に硬鉛管は送液用に使用される。

軸受合金(※1)

鉛軸受合金はPb-Sn-Sb系を主体としたホワイトメタル(JIS H 5401: 1958)と、鉛に少量のアルカリまたはアルカリ土類金属を添加した合金とに大きく分類される。バ-ンメタル(Al<0.2%、Ca約0.7%、Na約0.6%、Li0.04%、Pb残部)フラリ-メタル(Ca約1%、Ba約2%、Hg約0.2%、Pb残部)は鉄道用として使用される。青銅に鉛を添加した鉛青銅はすべり軸受材料として、銅-鉛合金軸受のケルメット軸受は高速高荷重軸受として使用される。

タ-ンプレ-ト(※1)

Sn8~16%、Pb残部よりなる合金をタ-ンメタルといい、これを鋼板の上に被覆したものでガソリン、各種薬品、石油系燃料に対して他の表面処理鋼板に比べて発錆が少なく、自動車用ガソリンタンク、石油スト-ブのオイルタンク、消火器、塗料、シンナ-などの各種容器に用いられる。

活字合金(※1)

印刷に使用される活字合金の主体はPb-Sb-Sn系合金で、特にかたさを必要とするときにはCuが添加される。

その他(※1)

鉛毛(コ-キング用)、鉛線(パッキング、コ-キング、魚網、メタリコン用)、鉛球(釣おもり、ウエイトバランス、快削鋼、散弾、放射線遮蔽用)、鉛スリ-ブ(鉛被ケ-ブル継手用)、鉛粉(重量コンクリ-ト、焼付防止、化学用、ロックナットのペンキ混合用)、鉛箔(放射線遮蔽、包装用)、すず張鉛箔(キャップシ-ル用)などがある。

(※1)出典:鉛ハンドブック 日本鉛亜鉛需要研究会
(※2)出典:JIS H 4312 :2000「水道用ポリエチレン複合鉛管」 日本規格協会