亜鉛の特徴

亜鉛は周期表12族(第Ⅱ属b)に属し、融点は一般の構造材料として用いられる鉄、アルミニウム、銅及びその合金に比べて低温です。また結晶構造が立方格子ではなく稠密六方格子です。この融点が低いことが鋳造に適しており、ダイカスト用合金として用いられます。また鉄に対する犠牲的防食作用が強いことにより、鉄鋼の防食に欠くことのできない金属です。一方、亜鉛自身の耐食性も中性域では十分にあります。又、他の金属に添加し合金としての特徴を発揮するために欠くことのできない元素です。

亜鉛の物理的性質
原子番号 30
原子量 65.38
結晶構造,格子定数 a 2.6649Å
c 4.9470Å
密度(20℃) 7.133g/cm3
線膨張係数(20℃付近) 39.7×10-6cm/cm/℃
融点 419.5050℃
沸点 906℃
比熱(20℃) 0.0915cal/℃/ℊ
融解熱 24.09cal/g
熱伝導度(20℃付近) 0.27cal/cm2/cm/℃/sec
電気比抵抗(20℃) 5.916μΩcm
縦弾性係数 9400kgf/mm2

(亜鉛ハンドブック改訂版:日本鉱業協会 鉛亜鉛需要開発センター)

亜鉛鉱石

亜鉛のクラーク数は4×10-3で、鉛とともに古くから知られていますが、金銀採取の際の副産物または残滓として長い間扱われてきました。したがって亜鉛の鉱業としての歴史は比較的新しく、亜鉛がわが国で採取されるようになったのは、明治30年代以降の事です。

亜鉛の主な鉱石鉱物
鉱物名 化学組成
閃亜鉛鉱 Zincblende,Sphalerite
ウルツ鉱 Wurtzite
菱亜鉛鉱 Smithsonite
異極鉱   Hemimorphite
紅亜鉛鉱 Zincite
ZnS
ZnS
ZnCO3
Zn4Si2O7(OH)2・H2O
ZnO

注:鉱石として主なものは閃亜鉛鉱(Zn 67%)、ウルツ鉱(Zn 67%)、菱亜鉛鉱(Zn 52%)、異極鉱(Zn 54%)です。閃亜鉛鉱中に多量のFe(+10%)を含むものを閃亜鉛鉄鉱(Marmatite)と呼んでいます。

 

亜鉛の製錬

亜鉛の製錬には、乾式法(蒸留亜鉛)と湿式法(電気亜鉛)があり、各々その特徴を生かした操業を実施しています。

乾式法

亜鉛の乾式製錬法は、酸化亜鉛の炭素還元反応が基本であり、これはすべての乾式法(水平レトルト法、縦型レトルト法、電熱蒸留法、溶鉱炉法)について言えることです。

反応式は次のように表されます。

ZnO(s)+CO(g) = Zn(g)+CO2(g)
CO2(g)+C(s) = 2CO(g)

この反応は工業的には、1100~1300℃で実施されるますが、この温度で回収される亜鉛が蒸気となるため、この蒸気をコンデンサーで凝集させて溶融メタルを得る必要があります。

湿式法

亜鉛の湿式精錬法は、鉱石を焙焼した焼鉱を電解尾液(硫酸)で溶解し、得られた硫酸亜鉛溶液から電解採取により金属亜鉛を回収します。

亜鉛地金の化学成分:JIS H2107:2015(単位%)
種類 Zn Pb Cd Fe Sn Cu Al
最純亜鉛地金 99.995
以上
0.003
以下
0.002
以下
0.002
以下
0.001
以下
0.001
以下
0.001
以下
特種亜鉛地金 99.990
以上
0.003
以下
0.003
以下
0.003
以下
0.001
以下
0.002
以下
0.002
以下
普通亜鉛地金 99.97
以上
0.02
以下
0.005
以下
0.01
以下
0.001
以下
0.002
以下
0.010
以下
蒸留亜鉛地金特種 99.7
以上
0.3
以下
0.01
以下
0.02
以下
蒸留亜鉛地金1種 98.5
以上
1.3
以下
0.2
以下
0.025
以下
蒸留亜鉛地金2種 98.0
以上
1.8
以下
0.5
以下
0.1
以下