環境とリサイクル
亜鉛は主要目的が鉄の防錆として用いられるため、使用過程で亜鉛自身が酸化溶出していくことから、かつてはリサイクルが難しい金属とされてきました。
しかし従来から、めっきやダイカスト工程で発生する廃棄物を原料とするリサイクルが行われているのに加え、鉄鋼生産用の電炉で発生するダスト(煙灰)を原料としたリサイクルが進み、リサイクル率が上がっています。
現在日本国内での亜鉛のリサイクル率は25%前後と見られています。
鉄製品や土木建築物を処分、解体した際に発生する鉄板や鉄骨、鉄筋等の鉄スクラップは、回収されたのち工場で裁断され、プラスチックなどの異物を取り除いた後に、製鋼工場に鉄原料として運ばれます。製鋼工場では鉄スクラップを電炉で溶解したのち、鋳造、圧延して鋼材に加工します。
電炉で鉄スクラップを溶解する際に発生する煙灰(ダスト)は、環境対策のためフィルターで回収されます。鉄スクラップの表面にめっきされていた亜鉛は、鉄よりも沸点が低いため蒸発し、亜鉛酸化物となって電炉ダストの中に30%ほど含まれます。
電炉ダストの一部は産業廃棄物として処分場に捨てられますが、電炉ダストをロータリーキルンで加熱し、亜鉛分をもう一度揮発させて60%程度に濃縮したものは粗酸化亜鉛と呼ばれ、亜鉛地金の原料としてリサイクルされます。
鉄スクラップを原料とする電気炉は鉄鉱石とコークスを使う高炉に比べ、製造時の二酸化炭素(CO2)排出量が4分の1程度しかありません。今後鉄鋼業界での脱炭素の動きが広がるにつれ電炉での鉄鋼製造が増えると見られており、それに伴い亜鉛のリサイクルも加速すると考えられます。