亜鉛ダイカストに関する質問にお答えします。

Q1:ダイカストはいつ誰により始められましたか。

世界で最初のダイカストは1838年バースによる活字合金のダイカストです。日本では亜鉛ダイカストは1900年頃から始められていますが、当時はダイカスト用合金は品質の良いものがなく、商業ベースにのったのは戦後です。

Q2:亜鉛ダイカストは鋳物とはどこが違うのですか。

鋳物は、基本的に砂型に溶けた合金を流し込んで製作されますが、ダイカストは、金属製の型に溶けた金属を圧入して製作します。このため、鋳物は砂型の精度、砂の表面粗さなどの影響で、寸法精度が劣り、また型一個で製品一個なので、コストも高くなります。

Q3:鋳物、プラスチック、ダイカストの寸法精度のちがいを教えて下さい。

寸法精度は

  1. 亜鉛ダイカスト
  2. プラスチック
  3. 鋳物の順になり、亜鉛ダイカストが一番優れています。亜鉛ダイカストの寸法精度は総ての鋳造品の中で最も優れています。

Q4:亜鉛ダイカストは必ず表面処理が必要ですか。

そんなことはありません。精密さを生かして機械や電気製品の中に、重要な部品として組み込まれ、表面処理なしで役立っているものもたくさんあります。

Q5:亜鉛ダイカストを用いる場合、形状の制限はありますか。

プレス、切削、打ち抜きなどの加工方法に比べて設計の自由度が大きく様々な形状のものができるのが特徴です。可動中子などの採用によりかなり複雑な形状のものまでできますので、まずは、ダイカストメーカーにご相談下さい。

Q6:亜鉛はどのような用途に使用されるのですか。

亜鉛は、1995年には全世界で年間およそ730万トン消費されており、その用途は鋼材の防錆用亜鉛めっきに47%、黄銅用に19%、ダイカスト用に14%、その他(タイヤ、乾電池、飼料、肥料、医薬品、化粧品など)20%となっております。

Q7:亜鉛ダイカストは重いといいますが、他の金属と比べてどうなのですか。

鉄の比重は7.6、アルミは2.7、亜鉛が6.6で鉄よりはちょっと軽いがアルミよりは2.4倍重くなります。

Q8:ダイカスト化したときの重量軽減策として何かありますか。

亜鉛は重いが、一方では融点が低く流動性がよいので、製品形状を工夫することにより薄肉にすることが可能です。他素材では厚肉になるところを、1mm前後の薄肉にすることで重量減をはかることもでき、なおかつ、寸法精度がよいので精密に仕上げられます。

Q9:ダイカストした部品を機械加工はできますか。できるとしたら注意点は、どんなところにありますか。

もちろん可能です。亜鉛合金は切削性がよいので機械加工は容易です。しかも、ダイカストの寸法精度がよいのでわずかな加工代で良いという利点もあります。注意しなければならないのは、ダイカストは表面硬化層の下が多孔質のため、金型設計時に機械加工代(しろ)を0.3mm以内になるように考慮することが必要です。

Q10:亜鉛ダイカストの生産能力は一時間当たり何個くらいですか。

一つの金型に一個彫りあるいは多数個彫りができますし、異なる部品をいくつか彫ることも可能です。一個彫りの場合では、ミニカー部品のようなものなら鋳造型締め力10トンマシンで 500ショット/hr前後、自動車のラジエータグリルのようなものなら1000トンマシンで100ショット/hrくらい生産できます。

Q11:プラスチックと比べての利点は何ですか。また、製造方法のちがいはどこにありますか。

プラスチックに比べて、亜鉛は強度があること、寸法精度がよいこと、鋳造不良が出ても再溶解しやすいので、廃棄物が少ないということがあげられます。さらに、耐熱性、熱伝導性、放熱性、電磁波シールド性でプラスチックより優れています。また、亜鉛ダイカストはホットチャンバーダイカストマシン、プラスチックは射出成形機を用います。どちらも溶けた状態で金型に圧入するのは同じです。

Q12:亜鉛ダイカストのコストはどのくらいと考えると良いのでしょうか。

製品形状、寸法精度、表面状態によりかなり異なり、簡単には言えませんが参考としてダイカスト品一個当たり(めっきなどの後工程は除く)、10g程度の小物で5~10円程度、100~300gの中物で200~300円程度、300~500gで 300~500円程度、 500g以上の大物で400円以上です。

Q13:亜鉛ダイカストは振動を吸収する性質があると聞きますが、どんな製品に使われますか。

乗用車のドアミラーステー、オートバイのステアリングパイプ部品、CDおよびカセットプレーヤー、スピーカーフレーム、オルゴールフレーム、電動工具ボディ、ゴルフパターなどに使われています。振動を吸収するということは共鳴および騒音の低減にもなっています。

Q14:亜鉛ダイカストは金型で製造されますが、他の加工法も含めて、金型は高価なものだという話を聞きます。亜鉛ダイカスト用の金型はいくらくらいになるのですか。

製品形状、表面粗さ、寸法精度などで相当の開きがありますが、一応の目安としては、10g程度の小物で50~100万円程度、100~300gの中物で150~300万円程度、300~500gで150~400万円程度、500g程度の大物で250~500万円程度となっております。また金型寿命は製品形状にもよりますが、亜鉛ダイカストは50万個、アルミダイカストは10万個くらいといわれています。それだけ、亜鉛ダイカストは大量生産に適していると言えます。

Q15:亜鉛ダイカスト上のめっきとアルミダイカスト上のめっきでは後者の方が歩留まりが悪いのは何故ですか。

亜鉛表面はそのまま銅・ニッケル・クロムの電気めっきができますが、アルミ表面には電気めっきの前に亜鉛置換という特殊な工程が入るのでプロセスも複維で、また、アルミ合金の中に化学処理が困難な珪素が含まれているのでめっきが難しくなります。

Q16:亜鉛ダイカスト上の塗装とプラスチック上の塗装とでは、前者の方が優れているのは何故ですか。

プラスチック上は、鏡面光沢を得るバフ研磨加工ができないこと、塗装のとき高温での焼き付け乾燥ができないことで、見栄えも落ち、塗装性能も低くなります。

Q17:デザイン決定後から量産品が製造されるまで期間はどれくらいかかりますか。

設計10日、金型製作30~60日、試作10~30日、量産10~30日で合計期間60~130日です。

Q18:亜鉛ダイカストの良さを一言でいうと(デザイナーから見て)

自由な発想でデザインできる。重量感と高級感。機械的強度も良い。精密設計が可能。めっきののりがよい。多量生産ができ、金型寿命が長いなどがあげられます。

Q19:亜鉛ダイカストの特徴を生かして、単体で売られた商品にはどのようなものがありますか。

人形(キャラクター、歴史上の人物、架空の動物・人)・置物(ペーパーウェイト、ペーパーナイフ、紙幣の金属模型、花瓶)・日用品(杯、ワイングラス、栓抜き、キーホルダー、キャラメルのおまけ、金属模型)などがあります。

Q20:亜鉛ダイカストの表面処理はどんなものがありますか。

めっき仕上げ、塗装仕上げ、ジンカート仕上げなどがあります。めっき仕上げされることが多いのですが、その種類も、クロム、ニッケル、銅、銀、金など多種多様にわたっており、非常に美しく仕上がります。このため、金、銀のような高価な金属も亜鉛ダイカストにめっきをすることで、高級感あふれる素材として様々なところに使用されます。

Q21:ダイカストにはどんなものがありますか。

亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、黄銅などがあります。そのなかでもアルミ、亜鉛が量的には多いものとなります。

Q22:金型の寿命は他の合金ダイカストと比べて長いのですか。短いのですか。

製品の形状にもよりますが、亜鉛ダイカストは50万個以上、アルミダイカストは10万個くらいといわれてます。それだけ、亜鉛ダイカストは大量生産にむくと言えます。

Q23:亜鉛ダイカストで製品を作りたいのですがどこへ連絡を取ればよいですか。

このパンフレットの発行元である日本ダイカスト協会にご相談下さい。お近くの会員会社をご紹介します。

Q24:亜鉛ダイカストは高級品にばかり使用されるのですか。

亜鉛ダイカストは、表面処理の仕方により、高級感を出すことができるので、装飾品のような用途にも多用されますが、それだけでなく、寸法精度、機械的性質なども優れているので、精密部品として、電気機器、機械の部品としてもいろいろな分野に使用されています。

Q25:国内の亜鉛ダイカストメーカーは何社ですか。また、亜鉛ダイカストに使用する材料は何トンくらいですか。

ダイカスト協会加盟会社中のメーカーで、亜鉛ダイカストを手がけるのが100社以上あります。ダイカスト用の亜鉛合金使用量は、年間約60,000トンになります。

Q26:亜鉛ダイカストはよくプラスチックとかアルミに比べて高級感があるといわれますが、具体的にはどのようなところが評価されますか。

  1. 金属的な冷たさ(クール)、色に深みがある。
    そのままなら青みがかったシルバー色だが、めっきあるいは塗装品は前処理として、鏡面光沢を得るバフ研磨加工がなされているので、光線の具合(光輝部と影の線・全反射による輝き等)によって表面の色に、透明感がでて冷たく感ずる。
  2. 質感、メカ感、リアル感
    上記と同じ。また、他の造形方法と比べても、亜鉛ダイカストは金型表面の再現性がもっとも優れているので、シャープなエッジとコーナー・平滑面・微妙なアール等がそのまま表現できる。
  3. 重量感
    見るからにメタリックで重さを感じるが、持っても鉄に近い重量感がある。
  4. 価値観
    上のごとく見た感じ・感触・重さなどが良く付加価値は増し、これを所有することによる満足感が得られる。

Q27:ダイカストでできる製品のサイズはどれくらいまで可能ですか。

型締め力、金型サイズにより決まる。平面的(自動車の窓枠)、立体的で異なる。大きいものでは車のラジエターグリル、小さいものでは重さ1g程度の極小サイズも可能。

Q28:亜鉛ダイカストの用途分野はどのようになりますか。

非常におおざっぱな分類ですが、自動車50%、電気機械8%、二輪自動車10%、一般機械具4%、その他32%となっております。その他の中には住宅部品も含まれており今後の高級化志向にマッチしてのびるのではないかと期待されております。