この共通仕様書は公共住宅の建設に携わる建設省,住宅金融公庫,住宅・都市整備公団,都道府県,政令指定都市および地方住宅供給公社により構成される公共住宅建設事業者等連絡協議会によってとりまとめられたものであります。 昭和54年に共通仕様書が発行されてから,順次見直し,改定が行われ,このたびの平成5年度の改定は3回目になります。
適正な性能水準を確保するための判断基準に基づき,今回の改定では亜鉛めっきについても行われ,より実際的になってきました。
改定まえの共通仕様書では 「鉄部は鋳鉄を除き亜鉛めっきを行う。ただし,屋外の鉄骨階段及び高置水槽の架台等は,特記なき限り亜鉛めっきは行わず塗装による防錆処理を行う」となっていました。
これが,今回の改定では 「屋外鉄部は,特記がなければ鋳鉄を除き亜鉛めっきを行う」となりました。
現在ビルの非常階段及び屋上施設関係は,大幅に溶融亜鉛めっきが採用されています。
高所作業で危険をともなう塗装による塗り替えなどの必要のない,溶融亜鉛めっきの耐久性の優秀さが認識されてきたからであります。
また,亜鉛付着量についても最小板厚によって定められています。
共通仕様書の中でめっきに大きく係わりを持つ14章金属工事を主にその他,各編の中で溶融亜鉛めっきに関する部分を抜粋しました。
14章 金属工事
1節 一般事項
14.1.1 適用範囲:この章は金属板による屋根工事並びに金属製品及び金属に代わる合成樹脂等の製品の制作,又は取り付け工事に適用する。
2節 表面処理
14.2.1 亜鉛めっき:
- 鉄面の素地ごしらえは,16.2.2表による。
- 屋外鉄部は,特記がなければ鋳鉄を除き亜鉛めっきを行う。
- 鉄の亜鉛めっきの類別は14.2.1表により,適用は特記による。
種別 | A類 | B類 |
---|---|---|
表面処理法 | 溶融亜鉛めっきはJIS H8641(溶融亜鉛めっき)の2種による(どぶづけ) | 電気亜鉛めっき省略 |
備考 | 化工(形成)後,めっきを行うものに用いる。 |
(1)溶融亜鉛めっき亜鉛の付着量は,14.2.2表より,種別は特記による。ただし,特記がなければC種とする。
種別 | A類 | B類 | C類 |
---|---|---|---|
最小板厚(mm) | 4.5 | 3.2 | 1.6 |
亜鉛の片面付着量(g/m2) | 550以上 | 450以上 | 350以上 |
(2)電気亜鉛めっき 省略
4.亜鉛めっき面の試験は,次により,適用は特記による。
(1)溶融亜鉛めっきの亜鉛の付着量試験はJIS H0401(溶融亜鉛めっき試験方法)による重量法(直接法),又は塩化アンチモン法(間接法)のいずれかにより,均一性試験は硫酸銅試験方法による。
(2)電気亜鉛めっきの試験方法 省略
5. 検査により不合格となっためっきの欠陥部分の補修は特記による。特記がなければ14.2.4表による。なお,施工途中についた傷の補修についても14.2.4表による。
欠陥 | 補修方法 |
---|---|
不めっき傷 | 局部な欠陥が点在する場合 ワイヤーブラシで入念に素地調整を行った 後,高濃度亜鉛末塗料(金属亜鉛末を90% 以上を含むもの)を2回以上塗布する。 欠陥部が広範囲にわたる場合再めっきを行う。 |
かすびき | やすり又はサンダー掛けにより平滑に仕上げる。 |
摩擦面のたれ | ボルト孔及び摩擦面縁に生じたたれは,やすり を使って除去する。 |
以下各章の溶融亜鉛めっきに関する時効を抜粋しました。
4節 とい
14.4.1 材料
といその他は,14.4.1表により,材種等は特記による。
材種 | 規格 | 材質 その他 |
---|---|---|
配管用鋼管 | JIS G 3452(配管用炭素鋼鋼管)の規格品 | 白管 |
配水管継手 | JIS B 2303(ねじ込み式排水管継手)の規格品 | 亜鉛めっき |
以下省略
7節 雑金物
14.7.2 タラップ
1.材料の種別は特記による。
2.タラップに用いる材料の表面処理の種別は2節により,特記がなければ亜鉛めっきの種別は14.2.1表のA類とし付着量は14.2.2表C種とする。
16章 塗装工事
2節 素地ごしらえ
16.2.2 鉄面の素地ごしらえ
鉄面の素地ごしらえの工程は16.2.2表による。
工程 | 面の処理 |
---|---|
1.汚れ,付着物除去 | スクレーバ,ワイヤーブラシ等で 除去 |
2.油類除去 | 溶剤ぶき |
3.錆落し | ディスクサンダー又はスクレーバ,ワイヤーブラシ,研磨紙#100~180で除去 |
16.2.3 亜鉛めっき面の素地ごしらえ
亜鉛めっき面の素地ごしらえは16.2.3表による。ただし,表面処理亜鉛めっき鉄板で,りん酸塩処理されたもの及び表面に亜鉛-鉄合金が形成されたものは16.2.3表の工程3の化学処理を省略することができる。
工程 | 塗料その他 | 規格種別 | 面の処置 | 塗付量 (・/M2) |
|
---|---|---|---|---|---|
規格番号 | 規格名称 | ||||
1. 汚れ,付着物除去 | スクレーバ,ワイヤーブラシ等で除去 | ||||
2. 油類除去 | 溶剤ぶき。石けん水洗い又は弱アルカリ性液加熱処理湯洗い水洗い | ||||
3. 化学処理 | JIS K 5633の規格品 | エッチングプライマー |
1種
|
1回塗り | 0.05 |
20章 部品 その他工事
2節 その他
20.2.3 材料
スリーブに用いる材料は20.2.1表により,材種は特記による。
材質 | 規格その他 |
---|---|
鋼管 | JIS G 3452(配管用炭素鋼鋼管)の白管 |
以下省略
解説
以上が今回改定された「公共住宅建設工事共通仕様書」の溶融亜鉛めっきに関する主要な部分でありますが,その中で技術的説明を要する主な事項について,当研究会として次のように解説します。
(1)亜鉛付着量について 最小板厚が定められたこと
一般に溶融亜鉛めっきされる鋼材の亜鉛付着量は板厚に影響されます。
鋼材の板厚が厚いほど亜鉛付着量が増え,逆に板厚が薄いほど亜鉛付着量が増えにくくなる傾向を示します。|
これは鋼材の化学成分,表面粗度,熱容量などの複合的な要因による溶融亜鉛と鋼材との合金反応速度の差と考えられています。
JIS,ASTMおよびBSでも板厚と亜鉛付着量の関連性は規定されています。したがって今回の改定は実情に即して行われたものであります。
即ち亜鉛付着量が550g/m2以上の仕様であれば板厚は4.5m2以上でなければならないということであります。
(2)めっき面の補修について
亜鉛は鉄より卑なため,亜鉛めっきの表面に局部的な不めっきまたは傷があっても電気化学的な犠牲防食作用で腐食していきません。
しかし,このような場合でも高濃度亜鉛末塗料で補修しておいた方が望ましいという考え方であります。
(3)亜鉛めっき面の素地ごしらえ
りん酸塩処理されたもの及び亜鉛-鉄合金が形成されたものは化学処理を省略できるとしています。
前者は亜鉛めっき表面に規則性のある結晶を生成し,後者は表面を粗にし,いずれも下塗り塗料との足がかりをつくるため塗膜との密着性を向上させるものであります。
しかし,いずれも油脂分が付着したり,白さびの上に塗装すれば塗膜の密着性を劣化させますので取扱い及び保管には注意を要します。