ドアハンドルは建物そしてその場の雰囲気をも演出する
ドアノブ【4号:1988/7発行】
建物にとって、大切な「顔」ともいうべき玄関。そしてそこに使われているドア、ドアハンドル。現在の家屋建築では、表面がスッキリとなめらかな、シンプル志向のデザインが主流だ。多種多様なめっき・塗装に適した素材として、こんなところにもさりげなく亜鉛ダイカストは用いられている。シンプルでありながら、めっきの美しさから放たれる存在感。
画廊やナイト・スポットなど、高級感の演出を必要とするシチュエーションなら、アール・ヌーボー調のデコラティブなドアノブもいい。亜鉛ダイカスト製のドアノブに人の手によって使い込まれたいかにも年代を感じさせるめっきを施せば、レトロ感覚ただようゴージャスな雰囲気を醸し出してくれる。ビル・マンション・ホテルなどではシンプルなデザインの機能性あふれるドアハンドルがみられる。
建築部品の質感・高級感の演出には欠かせない亜鉛ダイカスト
なめらかな表面を持つシンプル&スリムの玄関・室内用ドアハンドルから、まわりに細かな細工をあしらったデコラティブなレトロ調ドアノブまで、そのデザインや形状を臨機応変に対応させることができるのは、亜鉛ダイカストの大きな特徴だ。亜鉛ダイカストは製品素材として特に際だったデメリットを持たないため、その造形力の豊かさを生かせば、かなり広範囲なデザインや形状の製品に対応できる。建築用部品のように、建物自体だけでなく周辺環境などの諸条件に配慮した柔軟なデザインが求められる製品においては、特にその実力を発揮しやすい素材といえるだろう。同じタイプのドアであっても、そこに取り付けるドアノブのデザインひとつで、ドアそのものやひいては建物全体の雰囲気がモダンにもなればレトロ調にもなる。建築部品のデザインは、このように建物の表情をいかようにも変化させる重要な役割を担っているはずだ。
室内では、システムキッチンの扉つまみやクローゼットをはじめとするひきだしの把手などに亜鉛ダイカストが使用されることが多い。なめらかな表面仕上がりシステムキッチンの扉つまみに、キッチンや家具の色調に合わせためっき・カラーリングを施したスマートなコーディネートのほか、家具の引き出しの把手表面に花模様を型抜きした、かわいらしい演出などもできる。
亜鉛ダイカスト製建築用部品の質感は、そのデザインや形状を変化させることによってさまざまな表情を見せる。
いつも使う部分だからこそ 問われるその強度
住宅用アルミサッシのクレセント(鍵)などは、毎日のように開閉して使用する部分にふさわしく、機械的強度・鋼性に優れているというメリットから亜鉛ダイカストが主力を占めている。度重なる開閉の摩擦によって起こるクレセントの摩耗や変形の度合いが、他素材に比べて非常に低く済むためだ。耐食性に優れるという理由から、湿度が高くなることの多い浴室のタオルハンガーなどを亜鉛ダイカストで製作する場合もある。また、設計面において薄肉で精密性の高い製品を製造することができる亜鉛ダイカストは、アルミサッシ用クレセントのほかドアハンドルやドアノブの錠前部分を成型するのにもたいへん適している。さらにショットサイクルの短い鋳造生産法であるうえ、他素材に比べてその金型寿命が3~5倍長いといわれる亜鉛ダイカストは、この金型寿命に比例して量産性もかなり高く、ものによってはひとつの金型で数十万個の製品を作ることもできる。溶解に要するエネルギーも少ないため、コスト削減面においても大きく貢献するわけだ。リサイクルがきくというメリットを考えれば、環境にも優しい素材であるという一面も持っている。
確かな存在感が室内空間の雰囲気を演出する
置き時計【8号:1998/9発行】
置物の素材には自然材が好まれ、大理石やオニキスなどの石、紫檀や黒檀の木、竹や紙などさまざまであるが、昨今ではプラスチックなども多い。そんななかで、重厚な存在感が好まれるのはやはり金属の置物のようである。金、銀、青銅、鋳鉄など、これも多種多様だが、材料そのものが高い、製作に手間がかかるといった難点がある。その点、優れた成形性、美麗な表面、重厚な質感と何拍子もそろっているのが亜鉛ダイカスト。
オブジェとして、あるいは日本刀、甲冑といったアンティークな調度品など、格調ある室内空間の雰囲気づくりの適材として活躍している。高級感を失うことなく、精度の高い作品を比較的経済的に創り出せる点が、亜鉛ダイカスト法の魅力のひとつであろう。
定番からオブジェまで
日本の伝統的な置物、調度には刀剣、甲冑といったものから南部鉄瓶や風鈴など金属製のものも数多い。しかしこれらはおおむね一品一品手づくりの工芸品ばかりであって、高価な骨董に類するものが多かった。
今の日本は洋風住宅が多いので伝統的な調度はマッチしない場合も多いが、持ち家が普及しているので住宅の調度類に対する潜在需要はかなり高い。ニーズの主流は手ごろな価格でそれなりの質感があるといったレベルのものであろう。デザインは既成のパターンから前衛的なオブジェまで多様で、造型の幅は広い。
このようなニーズを総合してみると、室内調度、装飾品の材料に求められる最大の特性は、ものにもよるが、第一にいろいろな形や意匠を自由に表現できる豊かな造形性であろう。次には彩色塗装などの表面意匠への適応性が求められる。反面、シビアな寸法精度や複雑精緻な形状,高度の機械的強度などへの要求は二義的なものとなるので、素材はかなり広い範囲から選択できることになる。こうした中で亜鉛ダイカストは何をアピールできるであろうか。
ダイカストは最良の金属加工法
ダイカスト法は、さまざまな金属加工法の中でも原料から製品に至るまでの工程が最も短いもののひとつといってよい。そのため、効率ひいては経済性、機能性に優れ、一般にどのような製品、用途に対しても、プレス加工、砂型鋳造、鍛造、機械加工といったたいていの方法より優れた結果が得られる。デザイン素材としては、金型に加圧しながら流し込むので十分な鋳込みができて、優れた形状に仕上がる点が細大のメリットである。
また、鋳肌が平滑で整っていることは、置物、調度等の用途に対する亜鉛ダイカストの今一つの大きな利点であろう。地模様をつけることも可能で、これによって多彩なデザイン展開が望める。亜鉛は大気に触れると表面に灰白色の化学的に安定した緻密な酸化皮膜が形成され、これが内部を保護するので特に表面処理を施さなくとも使え、そのままでも落ち着いた感じでおもしろい。
さらに表面に化粧を施すという点では、亜鉛ダイカストは優れた性能を発揮する。めっき、塗装、化成処理などさまざまな表面処理法のいずれにもよく適応し、好みのデザインに仕上げることが容易である。
また、たいていの素材は軽量であることが望まれるが、オーナメンタルな用途は例外的にある程度の重量が必要である。重々しい質感という感覚的な要素も大事だが、重くないと安定が悪いといった実際的な要素もある。この点、他の合金ダイカストに比べて比重がかなり大きく、鉄よりやや軽いといった位置づけの亜鉛ダイカストは、程よい素材なのである。
最後に経済性についても、これまで再三触れているので詳述は避けるが、亜鉛ダイカストの基本的なメリットとして評価されなければならないだろう。
装飾・調度品から構造パーツまで意匠性・機能性を高次元で両立
インテリア【14号:2001/9発行】
住宅が進化している。高気密・高断熱・高耐力などはもとより、質感やオリジナリティーを出すための雰囲気づくりに意匠性がさらに大きく問われるようになっているようだ。最近ではインテリアの細部パーツにいたるまで“こだわり”のラインナップを揃える住宅メーカーも少なくない。
こうした潮流の原動力になっているのは無論消費者ニーズ。住宅・建材・調度品メーカー各社は年々激しくなる市場環境に勝ち抜くべく、多様化するニーズに応えかつ価格競争力のある商品を続々投入しようというわけだ。
そこで亜鉛ダイカストである。いかようにでも“表情”をつくりだせる、すぐれた加工性・表面処理性・質感、そして抜群の生産効率が、これからの住宅用パーツ製造でさらに大きく注目されようとしているのだ。
身のまわりに溢れる亜鉛ダイカスト
ゴージャスな輝き、しっとりとしたつや消し、どっしりとした質感、優美な曲面、複雑な細工…、
これらはすべて亜鉛ダイカストで意のままに実現できる。
また金型寿命が長く、溶解に要するエネルギーも少ない。そしてリサイクルも効く。
亜鉛ダイカストは、高い質感・意匠性・効率性そして環境へのやさしさなど、なにを取っても理想的な製法なのである。
亜鉛ダイカストだから、いろいろな表面処理ができる
古美めっき、ジンカートによるブラックカラー仕上
つや消しクロムめっき仕上で落ちついた感じ
特殊な製造工法で中空部分を成形
胴部分と回転蓋に亜鉛ダイカストを使用
からくり付の胴部分及びスタンドに亜鉛ダイカストを使用
枠部分が亜鉛ダイカスト
胴部分が亜鉛ダイカスト
薄肉だからできる複雑な形状・装飾の例
寸法精度が優れているので、小さな製品も自由自在
デザイン性・質感を活かし、
至るところに亜鉛ダイカストが。
アーム部が亜鉛ダイカスト製。
和・洋を問わず高級感の演出に必須。
和・洋を問わず高級感の演出に必須。
亜鉛ダイカストを使用し細かな部分にもこだわりを。
どんな質感も意のままに演出。
意匠にこだわったオブジェにも最適。