三重県志摩水道事務所磯部浄水場
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亜鉛めっきされた鋼材、特にH形鋼、山形鋼などの形鋼がコンクリート中に埋設された場合の亜鉛めっき鋼材とコンクリートとの付着性に関する研究報告1)の概要をご紹介します。

1.実験方法

(1)試料

1.埋設用試験片

無処理鋼材及び亜鉛めっきした鋼材について、次の寸法、形状の試験片を使用した。

引抜試験用:
平鋼(SS400 50mm×4.5mm)
等辺山形鋼(SS400 50mm×50mm×4mm)
H形鋼(SS400 100mm×100mm×6mm×8mm)

割裂引張試験用:
平鋼板(SS400 30mm×4.5mm)

2.コンクリート供試体

引抜試験用供試体:
300mm×300mm×300mmの立方体に1.に示した形鋼を埋設

割裂引張試験用供試体:
JIS A1132による圧縮強度試験用供試体に平鋼板を割裂面にそって中央部に埋設

試験材令:
28日、91日

3.コンクリートの品質

JIS A 5308に規定された生コンクリートを使用
スランプ 9.5cm
圧縮強度……現場空中養生  19.5N/mm2(28d)、25.5N/mm2(91d)

(2) 実験結果

(1) 引抜試験結果

各供試体について引張試験を行い、最大付着強度(付着強度-すべり曲線の勾配が急変する点の強度)を試験片の面積(試験片のコンクリート埋設面積)あたりに換算したものを図1に示す。

図1 引抜試験結果
図1 引抜試験結果

図に見られるとおり、平鋼板及び山形鋼については亜鉛めっき鋼の付着強度が大きいことがわかる。H形鋼についてはその差は明確ではない。H形鋼のような形状の複雑な試験片では、試験片とコンクリートのつき回りの違いによるバラツキなどの変動要因が影響したと考えられる。

(2)割裂引張強度試験

平鋼板を埋設した圧縮強度試験用コンクリート供試体について、割裂引張強度試験を行った。平鋼板を埋設していない場合と比較して割裂引張強度は低下するが、その低下率が小さい供試体ほどコンクリートへの付着力が大きいと考えられる。

図2 割裂試験結果
図2 割裂試験結果
割裂状況(鋼材)
割裂状況(鋼材)
割裂面(亜鉛めっき)
割裂面(亜鉛めっき)

図2は材令28日および91日の試料について試験した結果である。材令28日、91日のいずれについても亜鉛めっき鋼材の方が引張強度は高くなっている。このことから相対的ではあるが付着強度としては亜鉛めっき鋼材の方が高いといえる。
なお、割裂面の状態が図2右下の写真で観察されるが、無処理鋼材と接していたコンクリート面はほぼコンクリートのままの外観、亜鉛めっきと接していた面の表面は変色していることがわかる。
X線回折の結果によると、この部分にはCaZn2(OH)6・2H2O成分が認められた。この成分はコンクリート中における亜鉛めっき材料の耐食性を向上させる一つの生成物としてすでに報告されているが2-5)、コンクリートとの付着強度にプラスの影響を与えている可能性も考えられる。

参考文献

  1. 村上和美、兼松秀行、市野良一、沖 猛雄;鉛と亜鉛 Vol.40,No.1, p38-43(2003)
  2. T.Oki; 5th Asia-Paciffic General Galvanizing Conference Abstructs(Busan),p20-31(2001)
  3. K.Murakami; 5th Asia-Paciffic General Galvanizing Conference Abstructs(Busan), p.209-221
  4. 沖 猛雄; 鉛と亜鉛,Vol.39,No.2, p2-9(2002)
  5. 村上和美, 兼松秀行, 市野良一, 沖 猛雄; 鉛と亜鉛, Vol39, No.4, p6-11(2002)