デザイン・質感ともに個性あふれるおしゃれなシェーバーの存在感

シェーバー【3号:1998/4発行】

“デキル男の”演出は、毎朝の身だしなみから始まる。この身だしなみに欠かせない、大切なアイテムのひとつがシェーバーだ。

シェーバーのデザインはこれまで、ブラックカラーの樹脂性ボディが主流を占めていたが、近頃ではゴールドやシルバーといったメタリックカラーのものも目立つようになってきた。

この個性的で美しいクールな金属光沢・手応えある重厚な質感をもつシェーバーを実現させたのが、ほかでもない、亜鉛ダイカストなのである。
「毎日使うものだからこそ、納得のいくおしゃれなものを」という、こだわり派・個性派の男ゴコロを満足させる、ハイセンスなデザインが光る。

オブジェにもなる ハイセンスシェーバーの魅力

亜鉛ダイカスト製のシェーバーは、“自分のテイストに合った個性的でおしゃれなシェーバーが欲しい”という、おもに若い世代の消費者ニーズに応えるための商品として生まれた。樹脂素材では出しづらい、金属の持つ独特の質感や重厚感、実際に手に取ってみたときの手触りや重みなど、商品としての満足感を製品に実現できる素材として、亜鉛ダイカストが選ばれたわけだ。この亜鉛ダイカストによって実現するデザイン性や質感は、現在、服部セイコーから販売されている、ウイスキーのスキットボトルをイメージして製作された「SPIRIT(スピリット)」にも生かされている、個性的な逸品だ。シルバー色のめっきのりのよさからくる上品な光沢などが、個性派の消費者にうけている。中でも携帯用の小ぶりなものはクリスマスや誕生日などに女性から男性へのプレゼントとして選ばれたり、トラベルグッズセットの一部に組み込まれるなど、おしゃれなシェーバーとしての位置づけは高い。

シェーバーのデザイン周期はショップ店頭における鮮度の問題から通常2年程といわれるが、ここ数年来続く消費者の商品に対する個性の追求により、多少の割高感はあってもおしゃれ度の高い亜鉛ダイカスト製シェーバーの周期はのび、需要は安定している。実際、SPIRITタイプのシェーバーを安価な樹脂素材で製作したところ、質感の違いからか、かえって客離れを起こすということもあったという。

亜鉛ダイカストは、洗面台のオブジェともいうべきデザイン的付加価値をシェーバーに与え、個性派消費者のニーズに応えているのだ。

愛機と呼ぶにふさわしい高級カメラに定着する亜鉛ダイカスト

高級カメラ【7号:1999/11発行】

愛機ということばがあるが、やや死語に近い。長く大切に使いたくても、素材や製造技術がダイナミックに変化する今日、特にどの分野でも日進月歩のエレクトロニクス技術が競っている現状では、何年か使えば新機種へのリプレースが避けられない。カメラもそのひとつ。だがアンティークなカメラを愛する人は今なお多い。アンティークカメラは骨董品ではなく、今でも立派に使える実用品である。こういうのを愛機というのだろう。

亜鉛ダイカストは、こうした愛機と呼ぶのにふさわしい趣味性、個人嗜好性の高い高級カメラの部材として重用されている。短命なライフサイクルに合わせた素材が多用されるなかで、亜鉛ダイカストは息の長い素材として異彩を放っているのである。

高級カメラの大衆化に貢献

ライカやコンタックスといったかつて絶対の名ブランドだったカメラの逸品はドイツ製だった。今では名前だけは聞いたことがあるとか、あるいはまったく知らない人も多いのではあるまいか。商業写真プロ用の4×5のハッセルブラッド(スウェーデン)なども有名だった。

今、カメラといえばキヤノンやニコン、日本製品が世界市場を席巻して久しい。やがて世界をリードするようになった日本のテクノロジーの先駆がカメラだったといってよいだろう。さらに、とどまる所を知らなかった日本のイノベーションの波は、より高度の技術を追求しながら逆にコストを下げるという離れ業を可能にし、それ以前は金持ちの道楽品だった高級カメラを比較的低価格の量産品にしてしまった。素材面でカメラのこの大衆化に大きく貢献したのが亜鉛ダイカストである。

カメラをはじめエレクトロニクス部品、光学機械、測定器具といった精密機械の部品は、当然きわめて複雑で精密な形状のものが求められる。部品は細かく数は多く、完成までには長い工程を経なければならない。しかも強度が必要となるとそれまでの常識では金属材料を機械加工する以外に方法がなかったわけだが、亜鉛ダイカストが登場し、一体成形で十分な強度を持った複雑精密な部品の製造に成功して加工工場がひとつ不要になるほどの革命的な省力化が可能になったのであった。

現在では軽量化への要請から樹脂部品も多用されるようになったが、それが日本製カメラは機械製品ではなく電子製品であると皮肉られる一因にもなっている。亜鉛ダイカストの重厚な雰囲気を重んじる声は多く、特に高級品には絶対に欠かせないものなのである。

自在の形状適応性

亜鉛ダイカストがそうした技術革新のキーとなり得たのはなぜか?まず、亜鉛ダイカストは精密機械分野で使われてきた他の材質、例えばねずみ鋳鉄、黄銅、アルミニウムの砂型鋳物、アルミニウム合金ダイカスト等々に比べて、強度、硬さ、剛性、靭性、衝撃強さにおいて優れている。したがって加工性に優れ、組み立て時のスピニング、曲げ加工などの成形が容易にできる。

また、複雑な形状や寸法精度のきわめて高い部品の製造、さらには高度の薄肉化が可能で、抜け勾配が小さい、鋳造後の成形も容易など、厳しい形状要求に対してまことに自在ともいえる適応性を示すのである。

この特性からして、大きいものでは車のラジエータグリルから小さいものならわずか1グラムのものまでカバーする範囲はきわめて広い。加えて非磁性、高い減衰能、高い電気伝導性も精密機械には歓迎される特性である。特にエレクトロニクス分野では電磁シールド可能な素材ということで、広い活躍の舞台が見込まれるのである。

家庭電化製品から最近ではパソコンなどの先端製品まで、サイクルが早まって廃棄物公害に拍車をかけているが、リサイクル性のきわめて高い亜鉛ダイカストは、こうした面でも今後の需要拡大が期待される。

紳士は小道具がお好き 復活する男のたしなみ

ライター【10号:2000/4発行】

ライターならジッポ、ロンソン、万年筆ならパーカー、モンブラン、時計ならオメガ、ロンジンなどなど、持ち物に凝る男性の定番というものがあった。マリリン・モンローの「紳士は金髪がお好き」という映画があったが、オトーサン、オジーチャン世代の「紳士は小道具がお好き」だったのである。だが、いろいろ安い実用品が出まわったせいか、それともお洒落の方向が変わったのか、持ち物に凝る人は少なくなったようだ。特にライター!。

使い捨ての百円ライターなるものの跳梁で、本格ライターは過去の遺物となってしまった……と思ったらこのところまた持ちごたえのする金属ライターの人気がひそかに復活しているのだそうである。

ズシリと重い風格

ここ数10年で人々のライフスタイルはずいぶん変わったが、とりわけ大変化は喫煙の風習だろう。タバコはすっかり悪役扱いになってしまい、かつて男の喫煙ポーズはカッコよいものだったのがいまやダサイ感じですらある。しかし、喫煙の捨てがたいメリットを唱える向きも根強くある。作曲家の高木東六氏は90歳を過ぎた高齢だが、過日、矍鑠としてテレビに出演、長寿の秘訣のひとつに「好きなだけタバコを吸い酒を飲んでいること」を挙げている。

またカッコよかったのはタバコを吸うポーズのみならず、ライター、タバコケース、パイプなど喫煙具はカッコよい男の小道具だった。喫煙人口の減少とあいまって、ライターなどはレトロな存在に化しつつあるが、一方、若者の喫煙者は女性を含めればむしろ増えており、ずっしりしたライターを好んで使う新しい年齢層が現れてきたという。紳士のたしなみの復活である。

このライターのボディーに使われているのが亜鉛ダイカスト。好みの形状を一体成形で造り出せ、表面パターンなども微細なものが表現でき、しかもメッキ下地としても最適の鋳肌なので、シルバーでもゴールドでも自由にデザインできる。さらに、ズシリとした重量感は、男が長く愛用する持ち物の風格に欠かせない。まさに亜鉛ダイカストの独壇場なのである。

道具のかなめをぴしりとキメる

とはいえ、流行の復古は決して同じことの繰り返しとはならない。写真のライターも、もちろん使い捨てではないが、角型のレトロな金属ライターとはだいぶ趣が違う。軽快で機能的な感じで、若い年齢層にもマッチしそうなデザインなのである。

ライターのような小道具ばかりではない。女性に比べ男性は一般に道具類ヘの思い入れが深いようである。その一つ、日曜大工をやる人なら覚えがあるだろうが、大工道具。今は電動工具が主流だが、実はここにも亜鉛ダイカストが活躍している。亜鉛ダイカストにとっていかに適した用途であるかの例を挙げれば電動ねじ回しと電動やすり。ねじ回しの場合、ギヤボックスのハウジングには複数のプラネタリ・ギヤと噛み合った内歯車が収められているが、これには音、がたつきを最小にするために極めて噛み合いのよいギヤ形式が必要。このクラスのギヤ製作には通常研削砥石加工や歯切りブローチ加工が必要である。また特に滑らかな表面仕上げも必要とされるが、これらの工程は大量生産に適さない。そこで登場したのが亜鉛ダイカスト。最新のCAD/CAM設備と特殊な金型仕上げ、適切な溶融亜鉛注入条件の設定などにより、ワンピース、ソリッドボディーの生産を可能にしてしまった。

また電動やすりでは、きびしい精度要求をクリアできる鋳造性、優れた耐磨耗性などから亜鉛ダイカストが適材として使われている。

このような特殊な要求や嗜好性のある用途の適材として専門特化しつつ、亜鉛ダイカストは多様多彩な市場に浸透しているのである。

さてどんな所にどう使われているかを具体的に見てみよう。ライター部品は、大きく分ければキャップ、ケース、架台、底蓋などに区分される。このうちキャップとケースは亜鉛ダイカスト製がまれにあるといった程度。

しかしメカと着火部のシャーシに当たる架台については、ほとんどのライターにおいて亜鉛ダイカストが使われている。また底蓋の場合も、ケースが板金あるいはプラッスチックであっても、注油口等を持つ底蓋は亜鉛ダイカスト製のものが多い。さらに、100円ライターでも、回転ヤスリ車は亜鉛ダイカスト製なのである。

カーライフを変えたカー・ナビゲーション

カー・ナビゲーション【11号:2000/7発行】

衣食住すべての局面で質的向上が説かれている。「質」といえば、耐久性、強度、機能性といった実用的な質にまず注意が集まったのは、過去の話。この意味での質の充足はもはや当たり前で、現在求められる「質」は、人間の知的・情緒的・感覚的な要求を満たす質に傾いている。現在のキーワードITは、私達の生活のそうした意味での質を大きく変えてしまった。カー・ナビゲーション・システム(いわゆるカーナビ)もその身近な例である。そして亜鉛ダイカストの新たな活躍の舞台でもあるのである。

ペーパードライバーが街へ

運転免許人口は増える一方だが、東京など大都会では、免許証は持っていても実際には運転しないいわゆるペーパードライバーによくお目にかかる。とりわけ多いのが女性、それも主婦である。
都会の場合交通機関には事欠かないので、道路の混雑や駐車の手間暇を考えると電車やバスを利用した方が気楽ということになるからだろうが、女性の場合はこれらに加え、道が判らないから運転しないという人も意外に多い。
ところがここ数年間、ペーパードライバーを返上してハンドルを握る人の数が増えているという。カー・ナビゲーション・システムの登場とその急速な普及の効果である。カーナビはカーライフに革命をもたらしたといっても過言ではないだろう。住所か電話番号を知っていれば、マップ上で走行位置をリアルタイムで示しつつ音声で道案内してくれる。前もってルートをチェックする必要もなければ地図を見ながらの危ない運転も避けられる。これなら気楽に運転してみようかという気にもなろうというものである。

亜鉛ダイカスト四つの魅力

ところで、カーナビのハード部品は、亜鉛ダイカストの最も新しい用途のひとつである。

高級セダンの車内など、内装面での高級感が重視される場面では、亜鉛ダイカストの持つ美しさは存分に活かされる。また、年々、高度な機能を搭載していくカーナビにとって、使用される素材は、もちろん実用的な基準を満たすものでなくてはならない。例えば、より薄く、大きな画面を実現するという矛盾した要求にも答えなければならない場面もあるのだ。

この美しさと機能の「質」という二つの側面を考えた結果、ある通信機器メーカーは亜鉛ダイカストに着目、MDなどと一体化したAVN(オーディオ・ビジュアル・ナビ)と呼ばれる製品のフロントパネル部分に亜鉛ダイカストを採用した。

亜鉛ダイカスト採用の理由と結果の評価については、四つのポイントが浮かび上がってくる。

1.「樹脂感覚」で設計できる

亜鉛ダイカストの最大の魅力は製造技術が確立していることにある。このカーナビの製造を行った技師によると、「樹脂感覚」で設計が行え驚いたという。音響機器などの製造に使用される例もあるが、フェイスのような細いフレームのある部品にも亜鉛ダイカストは使用できる。設計から鋳造、表面処理まで一貫した技術で行えば、樹脂をしのぐ立体的な造型が可能なのである。

2.剛性が高く樹脂製品より安心

パネル部分は薄さを求められるため、樹脂を使用した場合、強度面で、若干の不安があるが、その点、亜鉛ダイカストは剛性が高いので、非常に安心して使うことができる。

3.優れたシールド効果

カーナビを設計する場合、最も配慮しなければならないのは、内部の、あるいは外部からのノイズが引き起こす誤動作であるが、亜鉛ダイカストは減衰能効果が高いのでこの点でも安心できる。また、樹脂を使用した場合に加わる、シールド用めっき(電磁波しゃへい)の工程も省くことができたという。

4.高級な質感

オーナードライバーは特に自動車のインテリアに美しさ、出来上がりの高級感を求める。この点、亜鉛ダイカストは魅力である。

亜鉛ダイカストの高級感を出すのに貢献しているのがジンカート技術。薄肉のパネル枠に、薄膜で密着性の高いジンカート処理を施すことで、金型から抜きでたかのような高級感を持たせているのである。

以上のように、物性、デザイン性いずれの面でも亜鉛ダイカストは高い評価をいただいている。すぐれた機能に加え調度品としてのセンスや美しさもますます求められるこれからの商品クオリティに亜鉛ダイカストの持ち味がさらに活かされるチャンスが期待される。

フォトライブラリ

ライター火口まわり、上部架台等が小型ダイカスト部品

電動ドリル
作動パーツのバランサー

シェーバー

シェーバー
本体ケース部が亜鉛ダイカスト製

高級カメラ
内部部品、軍艦部に亜鉛ダイカストを使用

ライター火口まわり、上部架台等が小型ダイカスト部品

ライター

ライター

ライター

ライターハード部分に亜鉛ダイカストを使用。