亜鉛ダイカストが実現するアメリカンバイクの優美なデザイン
アメリカンバイク【1号:1998/1発行】
滑らかな素材表面にクロムめっきを施した美しいボディ。流行のレトロ感覚が生かされた、ズッシリと価値ある重厚感。他の追随を許さない威風堂々とした高級感…。アメリカンバイクの数ある魅力は、製品素材としての「亜鉛ダイカスト」の様々なメリットを生かすことによって実現している。数年前に始まったファッション、また冷蔵庫やトースターといった日用品などにいたる「レトロブーム」は、今やバイク部品にまでおよんでいるのだ。その素材性質から、頭で描いた通りのイメージを実際に製品として表現しやすい亜鉛ダイカストは、様々な製品製造に向く鋳造法として、ふたたび熱い注目を浴びている。
アメリカンバイクに欠かせない、亜鉛ダイカストの大いなる魅力
樹脂素材を多用したロードレース用バイクのレプリカ型に変わり、’70年代、’80年代に続く’90年頃からの第3次ブーム以来、現在も依然として高い人気を誇るアメリカンバイク。このアメリカンバイクの大きな魅力のひとつであるクロムめっきの美しいボディを作りだすのに、亜鉛ダイカストは決して欠くことのできない素材だ。上質の金属が醸し出す高級感、スマートでクールな重厚感は、表面処理性の良い亜鉛ダイカスト製品の上にクロムめっきを施すことではじめて生まれる。
亜鉛ダイカスト製品はシリンダーヘッドカバーやエルリアカバーなど、アメリカンバイクのボディとして表面にむきだしになる部分に多く用いられ、バイクデザインを左右する重要なパーツとして活躍する。亜鉛ダイカストの滑らかな製品表面にクロムめっきを施すと、他素材では出にくいクロム独特の深みのあるシルバー色を作り出すことができるのだ。この亜鉛ダイカストならではの色ノリの良さが、見た目の美しさとともに重厚な質感あふれるアメリカンバイクを誕生させる。
亜鉛ダイカスト部品を用いてデザインされたアメリカンバイクは、その走行時の優美な姿もさることながら、停車時においてもオブジェとして見る者の目を充分に満足させるゴージャスな美しさを放っている。
オールディーズデザインに甦るクラシックカーの魅力
クラシックカー【5号:1999/3発行】
優美だが、ダイナミックな野生を秘めた姿態。1930年代、ミリオネーアのステータスとして一世を風靡したジャガーSS100。今では、世界のクラシックカーファン垂涎の逸品である。
クラシックジャガー独特の雰囲気をつくっているのは亜鉛ダイカストの重厚なラジエターグリルやヘッドランプ枠。工業デザインの歴史は一面新しい素材活用の歴史でもある。クラシックジャガーの時代に、亜鉛ダイカストの品質の飛躍と自動車工業の興隆が出会い、そこに後世に残るデザインが生まれた。歴史は繰り返す。クロムめっきの滑らかな金属光沢の背後に潜む亜鉛ダイカストの重厚な質感の魅力は、オールディーズデザインとして今日に甦ろうとしている。
Oldie and goodie
「古きよきもの」という意味のOldie and goodieという慣用句がある。洋の東西を問わず、懐かしさをこめて、古い時代のもののよさを見直す気持ちは同じようだ。そこでデザインの流行はある周期で繰り返すことになる。
オールオプションでユーザーの好みに合わせた車を手づくりするカーメーカーが話題になっているが、こうしたカスタムカーでは、金属光沢を強調したアクセサリーを配したレトロなデザインが好まれているようだ。オールディーズデザインはトレンドとしてしばらくは定着しそうな気配である。また、比較的廉価な大衆車には樹脂めっきで代用するものもあるが、高級車になると亜鉛ダイカストの重厚感、質感が欠かせない。
車のオールディーズデザインのポイントは金属の飾りであるが、これは元来、亜鉛ダイカストにクロムめっきしたもの。亜鉛ダイカストと車の出会いは70年も昔にさかのぼる。亜鉛は融点が比較的低くて、しかも機械的性質が優れているという工業用部材としての適性を備えているが、高純度の亜鉛の製造法が開発されていなかった当時では、微量不純物による粒間腐食という問題があった。新しい製造法が開発され、これが解消したのは1928年のこと。同時に機械的性能はさらに改善され、また金型材の開発も進むなど、用途開発の道は大きく開けたのである。フォードが流れ作業方式を開発して自動車が量産時代を迎えたのもこの頃で、部品も量産化の波に乗り、亜鉛ダイカストはタイミングよくこの需要にミートして一気に伸びていったのである。
いかなる形状の成形も可能なワンピースの重厚な質感
ワンピースの重厚な質感が亜鉛ダイカストの魅力で、自動車の装飾的部材に好まれ、現在のオールディーズカーデザインにまでつながっているのであるが、そうした使い方に適した条件を持つ金属となると、意外に少ない。この点亜鉛ダイカストはうってつけの材料なのである。
- 表面仕上がりが優れている
滑らかな表面を持つ製品が得られることは、ダイカスト法ならではの特徴である。優れた表面形状は、めっきをはじめ種々の表面処理を可能にし、デザイン選択の幅を広げる。 - 耐食性が優れている
亜鉛めっきが鉄の代表的な防錆法として昔から行われていることからもわかるように、亜鉛は本来耐食性に優れた金属である。これに適切な表面処理を施せば耐食性はさらに飛躍する。車のような屋外使用物には欠かせない材質である。 - 生産速度が速くコストが低い
工業材料として基本的なメリットのひとつである。 - 環境にやさしい
亜鉛は生産時の消費エネルギーが他の金属に比べて少なくてすみ、リサイクル性に優れ、廃棄物も少ない。
このようにメリットのいくつかを拾っただけでも、亜鉛ダイカストが性能面、デザイン面ともに多様な要求に応えられる好素材であることがおわかりいただけよう。
フォトライブラリ
本体及び支持台が亜鉛ダイカスト製。クロムめっき仕上げ
円錐形でない板状の本体と金具一式がクロムめっき仕上
ボディーのアクセントとしてダイカスト枠は欠かせないものだった
テールランプ枠とバックバンパー及びラインモールをダイカストで一体化した。
アメリカン・オールディーズ・カーの好事例
「ハンドルのホーンリング」「メーター類の枠」「ラジオ枠とつまみ」
全てクロムめっき仕上である
クロムめっきが施してある
車のシンボルマークとして、必ずこれがついていた。
量産車の多くはダイカストにより、凝った仕上を施してある
シリンダーヘッドカバー、エルリアカバーなどがダイカスト製。
クロムめっきで美しさを演出
ヘッドライト枠、ラジエターグリルなどが亜鉛ダイカスト製。