農畜産施設における各種環境下での溶融亜鉛めっきの耐食性を調査するため,施設設置農業団体の協力を得て,(社)日本溶融亜鉛鍍金協会が2カ年暴露試験を行いました。
設置場所としては佐賀県唐津市,熊本県菊地市及び沖縄県読谷村,大里村の牛舎,豚舎,温室堆肥センター6施設の25カ所で行いました。
暴露期間は6カ月,1カ年及び2カ年としました。
試験片はSS41材で寸法100×200×3.2mmを使用し,1回の調査で3個の試験片を取りはずし,3個の平均値を1カ所の腐食減量としました。
農畜産施設における溶融亜鉛めっきの耐用寿命は,使用される環境により変わりますが,一般的には次のような傾向を示しました。
- 温室内部は高温多湿にもかかわらず年間腐食量は12.3g/m2と比較的小さく,良好な耐食性が期待できます。
- 牛舎,豚舎建屋部材は,部分的には白さびが発生しますが,年間腐食量は13~14g/m2程度であり,長期の耐用が期待できます。
熊本県菊地市農協堆肥センターの場合,屋外での年間亜鉛腐食量は16g/m2程度であり,牛舎建屋内(床上約3m)は13.1g/m2,糞尿が時々かかる牛舎の吸水場周辺では20g/m2,直接生糞に接触させている所では35g/m2であります。
しかし,生糞尿ピットの中に浸漬した試験片の年間腐食量は391g/m2と非常に大きな数値を示しました。これはアンモニア分によって腐食量が大きくなったものと思われます。 - 堆肥センター内の発酵槽より発生する水蒸気の影響は殆どないように思われます。
すなわち,農畜産施設における溶融亜鉛めっきの耐食性は,常時湿った生糞尿と直接接触する箇所以外は非常に良好であります。
従って牛舎,豚舎における建屋部材においても,床上30cm程コンクリート巻きにして,全部材溶融亜鉛めっきを行えば長期の耐用が期待できます。
2年間の暴露試験結果の一部より,年間当たりの亜鉛腐食量及び推定耐用年数を次にまとめます。
試験片設置場所 | 腐食減量(g/m2/年) | 推定耐用年数 (年) |
---|---|---|
(1)屋外フェンス部分 | 16.0 | 33.8 |
(2)牛舎建屋内部 | 13.1 | 41.2 |
(3)堆肥発酵槽(床上3m) | 14.8 | 36.5 |
(4)牛舎吸水場周辺 | 20.0 | 27.0 |
(5)生糞置場(直接接触) | 35.0 | 15.4 |
(6)屋外フェンス部分 | 14.8 | 36.5 |
(7)屋内繋留所周辺 | 9.7 | 55.7 |
(8)豚棚(豚接触部分)(床上3cm) | 35.1 | 15.4 |
(9)生尿集合個所(1m上) | 35.9 | 15.0 |
(10) 温室内部 | 12.3 | 43.9 |
(1)~(5)は熊本県菊池市,(6)~(7)は沖縄県大里村,(8)~(10)は沖縄県読谷村で,暴露試験を行ったものであります。
(注)耐用年数は亜鉛めっき付着量600g/m2として,めっきの腐食減量から次式によって計算した値であります。
耐用年数=亜鉛付着量(g/m2)÷腐食減量(g/m2/年)×0.9(*)
(*)この係数は,亜鉛皮膜の10%が残っている時点で鉄素地からさびが発生すると仮定した値であります。 (JIS H8641 溶融亜鉛めっき解説)